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講演録

:北海道女性医師の会が開催した講演会のご紹介です。
 

シンポジウム
「10代の性の今~医師・親・教師はどう向き合うか」を開催して

北海道女性医師の会 理事:長島 香(勤医協札幌病院産婦人科)

平成21年5月9日、北海道女性医師の会主催で上記シンポジウムを開催しました。このシンポジウムには女性医師、小・中・高校教諭、養護教員、医学生、親など約70人が集まり熱心な討論が行われました。私が司会を担当致しましたので、ここに報告致します。

北海道は10代の性感染症や人工妊娠中絶率が高いことが知られています。性のトラブルの予防・早期対応のために、学校・親・医療がネットワークを作る必要があります。このシンポジウムではまず道内で性教育を熱心に行っている3名の医師が講演し、次にデートDV予防教育を紹介、最後に皆で10代の性の現状や問題点を話し合いました。以下に講演内容を紹介します。

講演1 小樽保健所長:秋野 恵美子氏

秋野先生は長年熱心に子どもたちにエイズ教育をされています。今回、どのように子どもたちにお話されているかを講演頂きました。子どもたちには<行動変容を伴う性教育>を意識して話している。そのために中学校3年以上にはエイズについて話すことは欠かせない。エイズの予防知識を正しく持てば必ず行動は変容する。またエイズだけでは話が重くなるのでセクシュアリティを説明しながら、心が温かくなるメッセージを伝えることにしている。3歳から小6の子ども達には口・胸・性器のプライベートゾーンを説明し、性暴力の被害者や加害者にもならないようにすることが大事、と熱く語られました。カナダの性教育者・メグ・ヒックリングさんの講義を受け、メグさんに自分の講演のメッセージ力を確認してもらったという話もありました。子どもの心理を捉える性教育力をあらためて考えさせられました。

講演2 苗穂レディスクリニック院長:堀本 江美氏

堀本先生は日常診療以外に性教育を行い、行政や警察の方にもネットワークをお持ちの札幌の産婦人科医です。日本女医会子育て支援委員会『10代の性の健康支援ネットワーク、ゆいネット』の札幌地区委員としても頑張っておられます。昨年11月に開催した第1回ゆいネット札幌会議に、教育委員会、保健所、市議会議員、女性医師会員、産婦人科医が集まったことを報告されました。子ども達を健康に育てていくためには親・学校だけでは充分でありません。点在している人材を明らかにして<この地域で困ったこと起きたら、ここに相談すれば良い>というネットワークがあると本当に心強いと思います。

先生はまたいくつかのデータを提示されました。10代の中絶の多い県は1位:佐賀県(何故なのでしょう?)北海道:6位、ちなみに札幌市は全国平均の2倍の中絶率を10年以上キープしています。モデル地域になるはずです!日本が先進国の中では女性の経済・政治活動の参画率が格段に低いこと、子宮頚部癌予防ワクチンがアジアの中で医薬品として認可されていないのは、北朝鮮と日本だけ!というお話にも驚きました。最後に「母乳育児の環境整備をすることや、長時間労働を禁止し母と子がゆっくり向かい合える家庭環境を提供することが、児童虐待やDVの犯罪抑制に繋がる」と話されました。日本ではおじさん政治家が自分達に利益を誘導していますが、女性や子どもに目を向ける政治家が必要ですね。

講演3 函館湯の川女性クリニック院長:小葉松 洋子氏

小葉松先生は函館市の教育委員もされています。南渡島地域の中絶やSTD罹患率が北海道平均を上回るという事実や、地元高校生の性行動や意識調査の結果に衝撃を受けた小児科医が中心となり「函館・性と薬物を考える会」を組織されたお話がありました。この会は、子ども達に性教育や禁煙教育をするためには多くの講師が必要なので、医師だけでなく助産師・看護師・保健師・薬剤師にも講師としてエントリーして貰っているそうです。このためクラス単位の講演にも対応できるようになったこと、講師陣のレベルを上げるために講習会を行ったりお互いの講演内容をチェックしあっていること、講師の報酬の予算の無いところには無料でも出向いていること、を話されました。これらの成果だと思いますが、人口1000人あたりの10代中絶率がH15年の23人からH19年は10人まで減少した!というデータは素晴らしいと思いました。またこの活動に函館市長が「知恵の予算」として費用をつけ後押ししてくれていることも紹介されました。
最後に先生は、子ども達の教育を大切にしてくれる政治家を見抜く親の力、性教育活動を継続するには仲間とよく飲み・よく食べ・よく喋ることを大事にしていると話され、会場から拍手喝采を受けられました。


3人の医師の講演の後にデートDVの講演をしていただきました。

NPOピーチハウス~女性と子どもの元気の輪~

このNPOは札幌市の大学や高校でデートDV予防教育をしています。代表の志堅原さんを含む3名のメンバーに模擬講演をしていただきました。「愛されているから」と思っていたものが「実は相手に支配されていた」、「気づかないうちに恋人を暴力で支配してしまった」等々のことに、子どもたちが早く気がつくように対話形式で話を進めていきます。話の中で「暴力はそれを振う人が選んでしている」ことで「選ばないこともできるはず」、また「被害を受けるあなたは何にも悪くない」というメッセージを伝えます。最近は大人も含め女性の5人に1人がDV被害者だそうで、DVは被害者のみならずその家庭の子ども達をもボロボロにします。加害者も幸せにはなれません。子ども時代からDVの芽を早い段階で気がつき・切り取るこのプログラムは、今社会にとても必要なものだと感じました。

ここまでの講演で残り30分となりフリートークをお願いしました。精神科医からの発言「男子高校生が女子に暴力を振るっているのに出くわして、止めるように注意したことがある、恐怖を感じたが、知らん振りしないで関わるのは大事だと思った」。高校教師からは「勤務する高校には、安心して帰る家のない子どもがいる。3割の子どもは朝食を食べられない。勉強の前に生活が成り立っていない子ども達にどうやって向かえば良いのか?望まない妊娠や性行為感染症にかかったという話も稀ではない」という話がありました。他の高校の先生からは「自己肯定感の乏しい子どもが多いことを感じる」などの意見がありました。「寂しい子どもは認められたいがために早くから性交を開始する」と一般に言われており、私も日々の臨床でそれを実感しています。

子どもは自分で気がつかないうちに性のトラブルに巻き込まれるかもしれません。トラブルを予防する教育や、お金の心配をせずに相談できる場所が必要です。今回いろいろな職種の方にお集まり頂いて、忌憚のない意見を交わすことが出来たことは大きな収穫でした。今回を良き機会として10代の子ども達を守るネットワーク作りが加速されることを期待しております。



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