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講演録

:北海道女性医師の会が開催した講演会のご紹介です。

第5回 医学生と医師のおしゃべりフォーラム

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札幌医科大学 5年 伊藤友紀

日時:2011年1月15日(土)14:00~16:00
場所:札幌医科大学

《開催趣旨》

kouen 女性医師の占める割合が増えてきている今、女性医師の働く環境や家庭生活との両立についてみんなで考えていくことが大切だと思い、「女性医師と医学生のおしゃべりフォーラム」として昨年1月までに4回のフォーラムを開いてきました。しかし、女性に限らずすべての医師・医学生が医師の働く環境について考えることが必要であると考え、今回「医学生と医師のおしゃべりフォーラム」と改題しました。また、医師や医学生が労働環境について考えることは、現在の日本の医療をよりよいものにすることに繋がると考えます。
実際には、医学生が将来に対する疑問や不安、悩みを打ち明ける場が少なく、将来どのように働くかイメージしにくいのではないかと感じます。
このフォーラムで医学生が自由に医師と話をして、自分たちの将来を考え、医師として働くことについての疑問や不安を共有できればと思います。

《企画内容報告》

(1)開会挨拶
① 実行委員会代表 伊藤友紀
② 北海道女性医師の会会長 守内順子先生

(2)講演
島本 和明 先生 (札幌医科大学 学長・理事長)
鈴木 主幹 様(北海道地域医師確保推進室)
川名 瞳 先生(勤医協中央病院 初期研修医)
高橋 素子 先生(札幌医科大学 医化学講座)
遠藤 香織 先生(北海道大学病院 整形外科)
安藤 敬子 先生 (市立旭川病院 耳鼻咽喉科)

kouen 最初に、札幌医科大学学長・理事長である島本先生にご講演をしていただきました。地域医療の崩壊、研修医や大学院生といった若手医師の身分保障の問題、24時間体制の保育所の整備計画、現状での医師の労働環境の問題、休業中の医師の復職支援の必要性について、幅広くお話してくださり、後のパネルディスカッションにも繋がったと思います。

北海道地域医師確保推進室からは鈴木様にお越しいただき、離職防止、復職支援を図る必要性について考えることができました。

続いて川名先生からは仕事と家庭との両立について、家事は役割分担をしたり家電を利用するなどのアドバイスをいただきました。キャリアプランは長期的な展望を持ち優先順位をつけることが大切ということでした。

基礎研究に興味を持つ学生もいることから、医化学講座の高橋先生にもお話を頂きました。現状として、大学に残る人が減った分、基礎に入る人も減少したそうです。今女性医師が多いのは当たり前のことであり、積極的に活躍してほしいというメッセージをいただきました。

遠藤先生からは、学生時代の取り組みから今後の展望、人生選びについてまで、幅広くお話していただきました。私たち学生にとって、とても刺激を受ける内容でした。労働条件は男女共通に影響を及ぼすものであることや、現場の声を医療政策へ反映させることの必要性などを再認識させられました。

最後に、安藤先生からは「医師を辞めないでほしい、プロ意識を持ってほしい」という心のこもった言葉をいただきました。安藤先生のメッセージは、多くの学生に響いたようです。また、保育所の質(24時間、近くにあること)を高める必要性についてもお話していただきました。職場・育児環境に恵まれなかった医師の辛い気持ちや意見を聞くことも必要であるということでした。

(3)パネルディスカッション
kouenパネルディスカッションは、今年初の試みです。島本先生、安藤先生、高橋先生、遠藤先生、川名先生にパネラーを引き受けていただきました。
議論が大変盛り上がり、会場全体で医師の労働環境に対する問題意識を持つことが出来たのは大きな成果でした。その分、1時間では時間が足りなかったという意見が多かったです。以下に、参加者から寄せられたディスカッションテーマの希望と議論内容の抜粋を掲載します。

【寄せられたテーマ】

a.研修について[9]

  • 子供がいる状態で(妊婦でも)初期研修をすることは可能か。
  • 学生が研修病院を決める際、女性医師の雇用(出産のことも含む)などに関して情報提供してくれる機関や相談窓口はあるのか。
  • 女性はどのような視点から研修先を決めればよいのか。
  • 道外へ出たいが、情報ゼロの状態からどのように病院を選べばいいか。

b.科の選択について[11]

  • 女性は科の選択について、目に見えない縛り(きつい科にはいけない)があるか。
  • 外科に進みたいという気持ちは確かにあるが、子供のこと家庭のことを考えると気が退けてしまう。今後こういった状況は改善されるか。やはり妥協しなければいけないか。

c.仕事の継続について[11]

  • 出産をした後に復帰するまでの間、パートで繋ぐことは可能か。6年間などの長期間は可能か。
  • 女性医師が仕事を継続できる環境整備が足りないと思うがどうか。
  • 何が課題か。

d.基礎研究について[4]

  • 女性にとって働きやすい場所か。
  • なぜはじめから基礎を選択されたのか。(高橋先生)基礎も臨床もどちらも興味がある。
  • 基礎研究の充実なくして臨床の発展はない。基礎に進んだ場合の将来について、生活の保障など。

e.家事・子育てについて[7]

  • 子供を作ることにはためらいを感じるか。

f.その他

  • 北海道の医療を良くするにはどのようにすればいいのかなどの具体的な対策。
  • 女性医師が増えているのは医師不足の大きな要因の1つであると思う。だから女性医師がもっと活躍できるような環境整備が政治なり行政なりの責務だと思うがどうか。
  • 女性医師の離職の理由はやはり出産、子育てがほとんどなのか。男性医師の離職はほほとんどないのか。
  • 整形外科はなかなか忙しい科だと思うが、女性として将来のことを考えた時、迷いはなかったか。
  • 地域医療、家庭医療。
  • 結婚をするかしないか。出会いの場に行く機会がないか。
  • 途中で科を変えたりしてはいけないか。

【議論内容】

外科について

  • 術前・術後管理、急変があり、計画を立てづらい。しかし、女性として細かい作業が得意なところは生かせる。
  • アメリカでは時間で切る交代制を取り入れているが。当直明けはきちんと休む。
  • 患者さんが主治医制に馴染み過ぎている。患者さんに対する意識改革も必要ではないか。

基礎研究について

  • 自己責任、継続することの大切さ。
  • 臨床研修制度によって、基礎を目指す人が減少。

勤務環境について

  • 困った時に助けてくれる口を多く持つことの大切さ。
  • 働き続けることが当たり前になっているが、精神論で語ってしまってよいのか。これが伝統なのか。制度を変えていかなくてはならない。
  • 患者も変わってきた。マスコミを利用することも必要。
  • 環境整備について、良くするにはどうしたらよいのか、具体的に考えなければならない。
  • 体制を変えていくことも必要。


《アンケート結果より、全体を通して》

アンケートの結果から、今回のフォーラムではみんなで問題意識を持てたということが伝わってきます。
普段聴く機会の少ない基礎研究の話や医師を辞めないでほしいというメッセージを聞くことができて良かった、制度として変えていかなければならないことが多くあることを認識した、労働環境や自らのキャリアについて考える機会になったなど、たくさんの感想を学生からもらいました。中には、仕事を辞めて辛い時期を過ごした経験のある女性医師の話を聞きたいという意見がありました。職場や育児の環境に恵まれなかった医師の意見を聞くことは、現状を知る手立てであり、今後医師の勤務環境を改善していく上で非常に重要になってくると考えます。

パネルディスカッションの後半の議論の中で、日本の医師は無理をしてでも働き続けることが伝統的に当たり前になってしまっていることを痛感しました。体力や職場の環境に恵まれた医師は、無理をしてでも働き続けることが可能かもしれませんが、実際にはそうでない医師も多くいるのが現実です。また、医療の質を低下させることに繋がることが何よりも問題であると考えます。この厳しい現状の中であっても頑張って働き続けよう、という気持ちも大事かもしれませんが、現状を世間に知ってもらい、根本的に制度を変えていくことが必要であると考えられます。これに関連して、働き続けることについての低学年からの大学教育も強化する必要があると思います。

常勤医として働くために必要な制度として、特に学生で24時間保育や休暇を求めていることがわかりました。これらは早急に整えられなければならない制度であると思います。制度を変えていくということは、決して簡単なことではないですが、学生の内から勤務環境についての現状を知り、現場の声を行政や世間に届けていくことが出来ればと思います。



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